NACK notes #010|いまを読む
ブランディングについて考えるとき、僕はまず、自分の判断に戻ってみたくなる。
なぜ、この色なのか。なぜ、この言葉なのか。なぜ、この仕事を引き受けるのか。反対に、条件がよくても引き受けたくない仕事があるのは、なぜなのか。
デザイナーとして仕事をしていると、日々、大小さまざまな選択をする。文字の大きさを決めることも、企画の方向を決めることも、その一つだ。すべてに立派な理由を用意できるわけではない。「なんとなく好き」「どうしても気になる」という感覚から始まることも多い。
ただ、その感覚を少し掘ってみると、自分が大切にしているものが見えてくる。
読みやすくしたいのか。驚かせたいのか。安心してもらいたいのか。それとも、当たり前になっていることを、一度疑ってほしいのか。
僕は、ブランディングの出発点はここにあると思っている。
自分は何に価値を感じ、それをどんな判断で示しているのか。
一つの仕事だけでは伝わらなくても、選択が積み重なると、その人の輪郭が見えてくる。「この人は、こういうところを大切にするんだな」と、誰かに受け取られるようになる。
自分が信じる価値を、誰かが期待できるものに育てること。今の僕は、ブランディングをそんなふうに考えている。
僕は音楽も、映像も、デザインも好きだ。アートに触れることも好きだし、ものがどう動いているのかを知ることにも興味がある。
やっていることだけを並べると、まとまりがないように見えるかもしれない。でも、自分の中では、隣り合っている感覚がある。ある作品で感じた面白さが、別の仕事の判断につながることがあるからだ。
では、その「面白さ」はどこから来たのか。
形が美しいからなのか。組み合わせが意外だからなのか。それまで見えていなかった価値に気づかされたからなのか。そうやって、自分の反応を問い直してみる。
僕にとって、アートとは、自分を見つめ直し、社会との接点に、まだ名前のない価値を見つけることだ。
自分は何に心を動かされ、何に違和感を覚えるのか。それを掘り下げ、表現してみると、自分だけの感覚だと思っていたものが、社会の誰かとつながることがある。
「僕もそれが気になっていた」「そんな見方があったのか」。そんな反応から、自分の中にあった感覚が、他者にとっても意味を持つと気づく。
その接点には、まだ言葉になっていない願いや、見過ごされている可能性がある。僕はそこに、ビジネスの種も見つかると思っている。